あらすじ
「ナイトメアゲームの参加者がそろいました」
山吹春斗は、冷たい床の上で目を覚ます。周囲の状況を確認していると、突如アナウンスが流れた。
制限時間内に、殺人ピエロに殺されることなく、夢の中の商業施設から脱出しなければならないという。
脱出のために与えられたヒントは、
「命を投げ捨てる気で頑張らないと脱出できません」
「今回のゲームでは、ピエロに殺されない限りは無事です」
という、意味不明で不穏なものだった。
夢の中であるにもかかわらず、床の冷たさや空気の感触はあまりに現実的だ。違和感と恐怖を抱えながらも、春斗は探索を始める。
歩き出して間もなく、視線の先で首が宙を舞い、血を噴き出しながら崩れ落ちる身体を目撃する。大鎌を振るう殺人ピエロによって、人があっけなく殺されたのだ。
このゲームをクリアできなければ、死よりも恐ろしい悪夢に永遠に閉じ込められる。
春斗はナイトメアゲームの謎を解き明かしながら、都市伝説「夢屋」に依頼した作成者――ホストの正体に迫っていく。
巧妙なミスリードが張り巡らされた、デスゲームミステリーの幕が上がる。
読者への挑戦が溢れたデスゲーム小説
絶対にミスリードさせられる
こんな人におすすめ!
☑謎解きや犯人当てが好き!
☑極限状態の人間心理を読むのが好き!
☑第17回GA文庫大賞銀賞受賞!
感想(ネタバレあり)
ナイトメアゲームをクリアするための謎解きと、作成者探しの展開が非常に面白かった。
ゲームの説明やヒントには少しずつ違和感が仕込まれており、それらを紐解いていくことで攻略法が見えてくる構成になっている。謎解きは、特別な知識がなければ解けなかったり、強引なこじつけに感じたりすることがなく、どれも納得感が高い。
理不尽な極限状態に置かれ、冷静さを保とうとする者、他人を利用して生き残ろうとする者、恐怖に飲み込まれて崩れていく者など、それぞれの反応がリアルに描かれることで緊張感が高まり、脱出できたときの解放感をより強いものにしている。
特に印象に残ったのは、対決ゲームにおける春斗と冬木の対立構造だ。全員で助かる道を探す春斗と、いち早く自分だけが助かる道を探そうとする冬木では、考え方が真っ向から対立する。対決ゲームの内容に二人が気づいたとき、冬木は春斗が戻ってくる前に自分が助かる方法を確定させなければならず、一方の春斗は、冬木が行動を起こして犠牲者が出る前に、全員で助かる方法を共有しなければならない。助かるために他者を犠牲にすることをためらわない冬木にとって、自己犠牲を厭わない春斗の姿勢は苛立ちの原因であり、この価値観の衝突が物語を大きく盛り上げていた。
夢屋に依頼して作られる夢は、作成者の記憶やイメージに依存しており、知らない人間を悪夢に呼び出すことはできない。そのため、SNSをやっていない春斗と奈津美を呼び出すには、作成者が二人の知り合いである必要がある。この設定から、春斗と奈津美が容疑者として浮上し、バトルロイヤルゲームで狙い撃ちにされる展開が非常にスリリングだった。春斗が逃げながら学校を探索し、作成者の手がかりを探す場面では、学校名が伏せられている中で「県大会優勝」と書かれた垂れ幕が重要な意味を持つ。キャラクターの出身地という、布石だと意識していなかった情報が活かされる瞬間に痺れた。
中でも、バトルロイヤルゲームで春斗が作成者を特定し、おびき出す作戦は、この作品で最も面白い場面だった。作成者の偽装工作が巧みで、読者である自分も他のキャラクターを疑ってしまうほどミスリードされる。だからこそ、その偽装を見抜き、作成者を出し抜いた春斗の作戦には強い衝撃を受けた。さらに春斗は、作成者の思惑を看破するだけでなく、最も疑い深い冬木を仲間にしていた。これまで対立してきた二人が、ここで協力する展開が非常に熱い。
キャラクターの名前に季節や植物が含まれていることや、夢屋のアナグラムなど、名前に法則性がある点も、今後の展開につながりそうで気になった。
ミステリー要素が非常に優れており、結末が気になって一気に読み進めてしまう作品だった。
総合評価
★★★★★★★★☆☆ 8/10
すべてのナイトメアゲームの難易度が程よくて謎解きと物語の両方を楽しめた。春斗が夢屋に依頼する展開を読んでみたい。



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