あらすじ
同い年で家が近く、家族ぐるみの付き合いだったから、天羽は人生のほとんどを加恋と過ごし、好きになった。
中学卒業の日、天羽は幼馴染みの加恋に告白した。結果は成功した。
今まで日常にいた人が特別な人になった瞬間だった。
◇◇◇
「んんっ、ああんっ! すごい、気持ちいい……っ! 宗一くん……!!」
「はぁ、はぁ……大好きだ、加恋……!!」
午前授業でみんな早々に帰宅したがらんとした教室には、制服をはだけさせ、抱き合う男女がいた。
天羽の告白を受け入れたはずの加恋は天羽に見せたことない表情を見せ、聞かせたことのない声を上げ、させたことのない行為を天羽じゃない男に許していた。
天羽は金縛りにあったように動けず、その場に尻もちをついてしまった。怒り、悲しみ、憎悪、様々な感情が渦巻くが天羽は動けなかった。
そんな天羽の横を颯爽と女子生徒・幸歌が通り、「死ね!!!!!」とビンタをかました後、天羽の手を引いてその場から連れ出した。
天羽は幸歌から提案を受けた。
「だから、契約よ。私と貴方で……疑似恋愛、してみない?」
恋人に裏切られた者と婚約者に裏切られた者がもう1度恋愛で傷を癒し幸せになろうとする。
表紙が負けている女に見えない(笑)
こんな人におすすめ!
☑傷心した者同士の甘々な恋愛が見たい!
☑価値観がズレたサイコパス女を見たい!
☑ざまぁ系の展開に見えるが、明るい作品
感想(ネタバレあり)
本作は、裏切られた憎しみをぶつけて復讐する物語というよりも、裏切られた痛みを分かち合い、イチャイチャしながら乗り越えていく作品だ。そのため全体の雰囲気は重くなりすぎず、どこか明るさがある。お互いの傷を理解し、尊重し合う天羽と幸歌が、少しずつ距離を縮めていく様子がたまらなく微笑ましい。
特に物語を大きく動かすヒロイン・幸歌がカッコ可愛い。他の女と情事に耽っている最低なクズ婚約者を引っぱたくシーンは、読んでいて強烈にスカッとした。現実なら天羽のように立ち尽くしてしまう人のほうが多いだろうが、幸歌は一切躊躇せず突入する。この行動は、単にエンタメ的に派手だからという理由ではなく、幸歌と婚約者・宗一の関係性を知れば、悲しみよりも怒りが勝つと理解できる。だからこそ、幸歌の行動には納得感があり、ただ強いだけのヒロインになっていない。そのおかげで、彼女が見せる弱さにも違和感なく共感できる。
幸歌は天羽に、疑似恋愛によって互いの傷を癒やす契約を提案するが、ここからの幸歌がとにかく可愛すぎる。カラオケに行くことを不良の遊びだと思ってしまうほど真面目な性格ゆえ、一般的な学生の遊びを経験してこなかった反動なのか、何をしても全力で楽しむ姿が微笑ましい。ラーメンを食べに行ったり、ゲームセンターに行ったりするだけでテンションが爆上がりしている様子に、思わずにやけてしまう。ラーメン屋で「髪が邪魔だから」と天羽に髪を持たせる場面は、本当に“疑似”恋愛なのか疑いたくなるほど距離が近い。食事中に髪をかき上げる仕草だけでもドキッとするのに、このシーンは完全にそれを超えている。
ヒロインは幸歌だけでなく、加恋という存在も強烈だ。加恋は恋人に他の男との浮気現場を見られても、平然と天羽の前に現れる異常者で、一般的な価値観がまったく通じないタイプの人間である。嫌悪感を抱く読者も多そうだが、辻村深月作品に出てきそうな突き抜けたサイコパス感があり、個人的には嫌いではない。むしろ、そのズレきった価値観をもっと見てみたいと思わせるキャラクターだった。
総合評価
★★★★★★★☆☆☆ 7/10
主人公とヒロインの掛け合い+尊之が面白かった。加恋のサイコパスぶりをもっと書いてほしかった。



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