ツナグ

一般小説

 使者(ツナグ)を通して1度だけ死者と会うことができる。イタコのように人を媒介とするのではなく、本人が現れる。

 1度きりの死者との対話を誰に使い、何を話すか。

 アイドル、母親、親友、婚約者。それぞれの思いを抱えて満月の夜に邂逅する。死者との再会が生者に何をもたらすか。

まさかの伏線回収

☑色々なキャラクターの考え方に触れたい!

☑連作長編ならではの、それぞれの話がつながる瞬間が好き!

☑亡くなったけど、会いたい人がいる

 亡くなってしまった大切な人との1度きりの再会。こんな機会があれば両親や子ども、兄弟姉妹、配偶者、恋人、親友などに伝えられなかった感謝や謝罪、どうしても聞きたかったことを聞くために使い、後悔を無くして人生を前向きに進められることを想像するだろう。

 この想像は2つ違った。

会ってしまたことで

 1つ目は人生を前向きに進められると思っていたこと。3話目の親友の心得では、嵐は自分が優秀で1番であると思いつつも、親友の御園への嫉妬に苛まれる。舞台のオーディションで、今まで下に見てきた御園に主役の座を奪われる。嫉妬心が限界になったところで御園は交通事故で死んでしまう。救急車の中で「嵐、どうして」という言葉が、嵐自身が御園を死なせてしまったという罪の意識に追い込む。

 嵐の嫉妬心の描写がいい。辻村深月作品は女性の心理描写が卓越している。10代の少女の全能感、自分のことを特別だと思っている自信、自分の優位性が崩れる恐怖感を読者の脳に直接送り込んでくる。読んでいる時、他人の心を覗いている罪悪感がありながらも読み進めてしまう。

 御園が残した伝言で後悔と悲嘆に暮れる嵐。御園が伝言を残したのは嵐が考えている理由とは違った。嵐が気づいていない小さな裏切りが怒らせた。嵐は一生御園の死の業を背負わされた。

 嵐が舞台の主役を演じて2人の話は終わるが、嵐はこれからも御園の業を背負って演劇を続けていくと思う。しかし演劇を楽しむことなどできず、贖罪の機会も失ってしまったからただただ罪の意識で役を演じ続けるのだろう。

家族よりも推し

 2つ目は1度しか会えないチャンスは家族や友人に使うと思っていたこと。第1話のアイドルの心得では平瀬が芸能人の水城サヲリに会う。2人は面識はほとんど無く、平瀬が酔っぱらっている時に助けられたのを平瀬が一方的に覚えていただけの関係だ。

 家族との折り合いが悪く、友人もいないというのもあるのだろうが、死者と会えるという話の1番最初に憧れのアイドルの話を出すのに衝撃を受けた。今でこそ推しという言葉が広がっているが、10年以上前に推しに会う話を作っているのがすごい。

 推しとい概念があまり普及していない時に読んでも、憧れのアイドルに会うために使者を使うことに納得できるくらい、平瀬の境遇や水城に助けられた時の感動が丁寧に描かれている。

 水城に助けられた平瀬が最後の章で家族との関係も改善されていて、ホッとした。

 ★★★★★★★★☆☆ 8/10

 オムニバス形式で最後の章に新たな事実が出て、真実がわかる感覚がしびれる。序盤に張られた伏線の回収や歩美の両親の死の真相など、感動的なストーリーを想定していた分ミステリー的な要素に驚かされた。面白かった。

 

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