転生程度で胸の穴は埋まらない

ラノベ

 コノエは突如病気を患って死んだ。人知れず1人で死んだときに思ったことは自分の生きている意味だった。 

 コノエは常に孤独だった。両親から見捨てられ、極度にコミュニケーションを取るのが苦手で同級生や教師にも疎まれていた。誰からも守られないから真面目の皮を被ることで自分を守った。 

 何もない人生から目が覚めると、異世界にいた。 

 転生者が集う施設で、教官から生命魔法の加護を勧められる。過酷な訓練だが、極めれば金も名誉も女も全てが手に入る。 

 孤独で一生を終えたコノエは、自分を好いてくれる存在のために生命魔法の加護を選択するが地獄の訓練が始まった―

孤独で人の温かさを知らない主人公が想像を絶する苦難を超えて愛に触れる物語。 

真面目と惨めは紙一重

☑凡人が努力に努力を重ねて報われる話が好き!

☑このラノ2026新作文庫部門第2位の話題作に興味がある人!

☑重責を背負ったヒロインが好き!

 マジでキャラがいい。主人公のコノエはとにかく真面目。ほとんどの人間が脱落する生命魔法の過酷で過酷で過酷な訓練を25年間続け、世界最高峰の生命魔法の使い手であるアデプトに至った。訓練が殴られても殺されても蘇生させられ、訓練が終われば生命魔法で体力を回復させられて魔法の勉強をさせられる。

 描写が凄惨すぎて読んでて苦しい。コノエが訓練に耐えられたのは真面目さだけが理由ではない。神様が時折気にかけてくれたのも耐えられた理由の1つではある。1番の理由は沁みついた孤独への恐怖と愛の渇望だと思う。訓練を辞めれば楽になるが、人との関わりがなくなってしまう。冒険者になっても仲間はできない。そしてアデプトになれたら、惚れ薬で奴隷を作ることができる。自分を無条件で受け入れてくれる存在に焦がれていた。

 コノエの考えは極端にネガティブだが、それを不快に感じさせない過去と努力がある。幸せになってほしいと思う主人公である。

 ヒロインのテルネリカは気高い。自分が死病に侵されて血を吐いている状況でも町の人を助けるようにアデプトのコノエに懇願する。アデプトになって早々、自分の身を顧みず他人を案じるテルネリカに気圧されながらもコノエは治療する。

 テルネリカの治療をし、町の魔物を倒し、住民を治療したコノエの恩義に報いようとテルネリカは献身的に尽くした。満足に返事ができないコノエに何度も話しかけ、屈託のない笑顔でコノエと話すのが楽しいと言った。

 テルネリカの明るさと貴族の娘であるが故の責任感は全方位に好かれるヒロインだ。

 常に孤独で人を疑っていたコノエがテルネリカに心を開きはじめ、1人でいることを当たり前だと思っていたのが、テルネリカがいないことに心がざわつき始める展開にジーンとくる。

 真相を知り、これまでの謎がつながってコノエがテルネリカを助けに行くまでの流れは、ゆっくりと人の温かさを知る前半とは打って変わって急激な疾走感を伴い、ラストまで一気に読まされた。

★★★★★★★★☆☆ 8/10

コノエの過去の苦労を丁寧に描写しているので、コノエのネガティブな考えに苛立たず納得できるし、これまでの苦労が報われた最後の結末にも涙が溢れる。

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