あらすじ
攘夷志士たちが、ひとりのエルフの少女を取り囲んでいた。
その光景は、兄の死にざまを己道に思い起こさせる。抑えていた憎悪が爆発し、己道は攘夷志士を次々と斬り伏せていく。エルフを守りながら敵を倒していたそのとき、浅葱色の隊服に白いダンダラ模様の長羽織を纏った集団――新選組が現れた。
攘夷志士を捕縛した新選組は、エルフの少女も連行しようとする。しかし少女は必死に叫んだ。
「やだ……やだよ。私にはまだ、成し遂げなきゃいけないことがあるんだから!」
兄を殺され、すべてに絶望していた己道にとって、その言葉は強く胸を打った。
「悪いな、新選組。気が変わった。――こいつは渡さねえ」
「……あは。いいですよ。キミとやり合うほうが、よほど面白そうだ」
一度の踏み込みで、同時に三度の突きを放つ新選組最強の剣士。
己道は、その刃に喉と首を貫かれる。
自らの武士道を失い、命さえも落とした浪人が、ひとりのエルフとの出会いを通して「愛」を知り、再び命と武士道を取り戻していく。
幕末と魔術が交錯する歴史ファンタジーが、新しい時代を切り開く。
史実とファンタジーの絶妙な絡み合い
兄弟愛、情愛、友愛、愛で溢れる物語
こんな人におすすめ!
☑新選組が出てくる幕末が好き!
☑飄々としたドS天才剣士にメロつきたい!
☑スリルのある戦闘、笑ってしまうラブコメ、感動の結末、全てを味わいたい人!
感想(ネタバレあり)
① 世界観・設定・池田屋事件
新選組を中心とした史実に、魔術というファンタジー要素が加わった、最高にわくわくする作品だった。
火の雨によってエルフやゴブリンといった亜人種が誕生し、人間は魔力を自覚することで魔術という学問が成立する。鎖国が解かれた日本にも亜人種や魔術が流れ込むが、それを受け入れない攘夷志士が存在するという構図が非常に面白い。外国人ではなく「異種族」を登場させることで史実と重ねている点が巧みだし、通常は優遇されがちなエルフが、この作品では差別されているという描写も新鮮だった。
物語の中核となるのは池田屋事件であり、史実とオリジナル設定の混ぜ方が見事である。近藤と土方が分かれて旅籠を探すも空振りが続き、ついに池田屋に突入する場面での
「御用改めである! 神妙に縛につけ!」
という台詞には、興奮が最高潮に達した。しかし斬り合いが始まるかと思いきや、維新志士たちはすでに全員死亡している。史実では幕府と新政府勢力の戦いだが、本作では幕府とその対抗勢力を利用した久城レオンハルトによる“異世界修正”という構図になっている点が非常に興味深い。新しい日本を作るのではなく、元の世界に時を戻そうとする思想は、攘夷志士の考え方と重なる部分がありつつも、しっかりとオリジナリティを確立している。
② バトル描写
バトルは迫力が凄まじく、常に死が間近に感じられた。特に己道と沖田の殺し合いは圧巻である。普段は飄々とした優男である沖田が、戦闘に入った瞬間に目つきを変える。そのギャップからして、強くないわけがない。
己道は天才剣士である沖田の三段突きによって一度命を奪われているが、メスティーに蘇生され、再び相対した際にはそのからくりを見抜き、見事に防ぎきる。一度殺された技に対応する己道の精神力と技量の高さは新選組に入っても遜色ないものだ。
さらに三段突きを破られてなお、再び突きを繰り出そうとする沖田の姿には、自分が磨き上げてきた技への絶対的な自信が感じられ、その男前さが強く印象に残った。
リザレグスとの戦いでは、新選組側に近藤、沖田、永倉、藤堂が揃っている点も、池田屋事件を意識していて胸が熱くなる。邪神の攻撃が炎であることも、京都大火を想起させる演出のように感じられた。
③ キャラクターと感情描写
兄弟愛、友愛、情愛と、愛に溢れたストーリーである点も本作の大きな魅力だ。己道と求道の兄弟愛がメスティーとの出会いを生み、己道と沖田の友情が敵を打ち破る。さらに、己道・メスティー・沖田それぞれが胸に秘めた想いが化学反応を起こし、物語に強い感動を与えている。
三人が揃ったときの会話も非常に楽しい。己道や沖田がメスティーをからかうやり取りは、キャラクター同士の信頼関係があるからこそ生まれる軽妙なテンポで、文字だけなのに場の雰囲気が自然と伝わってきて思わず笑ってしまった。特にメスティーが似顔絵を描くシーンは、声を出して笑ってしまうほど印象的だった。
総合評価
★★★★★★★★★☆ 9/10
設定と世界観に一気に引き込まれ、キャラクターの魅力に心を掴まれ、ストーリーに泣かされました。
近藤が己道を新選組に欲しいと言ったシーンがあったので、そのアナザーストーリーも見てみたい。
島田アキがカラーイラストで牙突しているのもるろうに剣心好きな自分に刺さる。



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